重度の吃音が原因でいじめられた僕の体験記【第4話】君には未来がある

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これは僕の体験談ですが、わかりやすく表現するためにストーリー形式としました。

おおやけになるものなので、過激すぎる内容は避けました。実際に受けたいじめは・・・すいません、察してください。

主人公(僕)の仮名は「隼人(はやと)」としました。

この記事は全4話の体験記の「4話目(最終話)」です。

第4話 君には未来がある

小さな光

高校卒業間近になって、隼人は少しずつ自分を取り戻し始めていた。

依然としていじめは続いていたが、隼人はもう以前のように圧倒されることはなかった。

「男子大学生の本」がきっかけで希望を見出したこと、そして何よりも、地道に続けてきた「腹式呼吸」と「発声練習」の成果が少しずつ現れ始めていたからだ。

毎日コツコツと続けた訓練のおかげで、以前とは比べ物にならないくらい話せるようになっていることが自覚でき、話すことへの自信を取り戻しつつあった。

ある日、隼人は授業での発表の機会を迎えた。

これまでなら、人前で話すことに恐怖を感じ、何も言えなくなってしまっていただろう。

しかし、この日は違った。

隼人は深く息を吸い込み、心を落ち着かせてから話し始めた。

「いつもの訓練の通りにやるんだ。思い出せ」

隼人の声は以前のように震えることなく落ち着いていた。教室が静まり返る中、隼人の発表は無事に終わり、拍手が起こった。

吃音症きつおんしょうが発症して以降、こんなに話せたのは初めてだった。

その瞬間、隼人は自分の中に小さな光が灯ったことを感じた。

これまでの苦しい日々や長年の訓練が、少しだけ報われたような気がした。

そして、隼人は自分に対して、吃音きつおんがあるからといってあきらめることなく、これからも努力を続けていこうと誓った。

話すことが好きで好きでたまらない

高校を卒業した後、隼人は大学に通うために、田舎の町を出て、大学がある中都市で一人暮らしすることになった。

大学に入学しても、隼人は吃音きつおんを改善するための「腹式呼吸」と「発声練習」を続けていた。

しかし、それだけではなく、隼人は自分の吃音きつおんに対してさらに積極的な姿勢を持ち始めた。

話すことから逃げるのではなく、むしろ積極的に話す機会を増やし、「話すことを鍛えること」を決意したのだ。

その一環として、隼人は敢えて話すことが要求されるアルバイトを始めることにした。

隼人は「塾の講師」や「家庭教師」、「カウンター越しに接客する調理補助」など、話すことが求められる仕事を選んだ。

最初は戸惑いや緊張もあったが、次第にそれを乗り越え、自信を持って話せるようになっていった。

大学を卒業する頃には、隼人が吃音者きつおんしゃということは吃音きつおんではない人が気付かないくらいにまでに改善していた。

隼人の長年の努力は実を結び、「自分が選んだ道は間違っていなかった」と誇りを持ちながら人生を歩いていく決意を固めていた。

就職活動の時期がやってくると、隼人は緊張しながらも、これまでの努力を信じて面接に臨んだ。

最初の面接では、やはり緊張のせいで上手く話せなかったが、それは最初の数十秒だけで、面接の大半で、努力し続けてきたことや仕事に対する意気込みを熱心に語ると、それが評価されたのだろうか、無事に就職が決まった。

就職した企業でも話すことが重要視される営業部を希望した。

この頃は「話すことが苦手、話すことから逃げる」などの考え方とは正反対に、10年以上も話すことに飢えていたせいで、話すことが好きで好きでたまらなくなっていた。

「あなたも絶対に話せるようになります」

それから数年後、隼人はある動画配信サービスで吃音症きつおんしょうに関する特集を目にした。

そこには、吃音症きつおんしょうに悩む男の子の姿が映し出されていた。

その子が懸命に話している姿を見て、隼人は自分の子ども時代を思い出し・・・そして、目には涙があふれれていた。

吃音きつおんのせいでいじめられ、将来に絶望し、自ら命を絶とうと考えた日々。

しかし、今の自分はその頃とは全く違う。

画面に映る子どもを見つめながら、隼人は心の中で、

「君には未来がある」

と強く感じた。

自分が経験した辛さと、それを乗り越えてきた努力が、この子のような人のために何か役立つことができるのではないかと考えた。

隼人は、その思いをSNSで発信することを決意した。

「僕は長年の訓練のおかげで、吃音きつおんを克服できました。かつての僕と同じように吃音きつおんで悩んでいる子どもたちやその家族に向けて、少しでも勇気を与えられたらと思います。絶対にあきらめないでください、あなたの未来には必ず光があります。

ここに隼人がなすべき・・・・新たな使命が生まれた。

「あなたも絶対に話せるようになります」

【完】

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